・元服と入内と老い。一気に飛んだ4年の重みが、世代交代への予感として確実にひしひし迫ってくる第13回。
・OP明けから早速、定子さま本役登場。遂に登場。わーーー。
まさに理想のお姫様である明るく朗らかな定子さまと、喧嘩しながら仲の良い伊周。この兄妹の才気と積極性を培った環境がよく分かる道隆兄上一家の、一点の憂いもない愛情深く微笑ましい光景。
うわあ、このシーンわざとか。わざとここまで美しく(そしてまた伊周の危うい自信満々ぶりなど布石もしっかり)描いているのか。今から中盤戦へ向けて、下準備の入念さがひどい。
・お上の好きなものを私も全部好きになると歩み寄りつつ、でも虫だけは苦手と正直に笑い、すぐ帝と打ち解ける定子と、この命をお上に捧げ奉りますとまで心から誓ったのに受け入れてもらえず、最終的には鬼とまで帝に忌み嫌われた詮子。
入内前、快活にパタパタと走って両親のもとへ駆けていたそのままに入内後も振る舞う定子と、もう帝なのだから走り回らず悠然としていろと息子に言い聞かせていた詮子。
このあたりも、分かりやすく対比になっているんだろうなあ…
父と家に翻弄され幸せをあきらめた詮子が、その代わり政へ力を注ぎ息子を育てようとした道と定子の在り方は真反対で、と同時に詮子が得られなかった輝くばかりの幸せ―温かく仲の良い実家、夫との間に芽生えている確かな愛情ーを、いま全て得ているのもまた定子なんですよね。
帝と睦まじく遊ぶ定子を言葉では褒めながらも、その微笑ましさの中へもはや気さくに入っていけない詮子の表情の固さに、第1回で入内する自分を慰めるため足で文字を一生懸命書く弟に笑っていたあの頃との、遠い隔たりを思う。
・そして、姉上の寂しさを慮り笑わせようとおどけ、出会ったばかりの見知らぬ少女が泣き出せば俺が笑わせてやると言っていたかつての三郎=道長も、今はもう、妻 明子が微笑むことができなくても(それが自分の一族のせいだと知っていても)、「そなたを微笑ませる術もない」とただ受け流す。
・詮子姉上が道長と明子を引き合わせた理由のひとつが、藤原に追い落とされた明子の父・高明の怨念を鎮めるため。
微笑むこともない人生だったと語る、つまり父の恨みをいまだ忘れてないとほのめかす明子は、道長にとってはもしかして、母の仇として道兼を一生恨むと言っていた、それでも欲しいと心から願ってしまった まひろとのあり得た(でも手に入らなかった)未来に、少し重なるところもあるんじゃなかろうか。
とはいえ、4年たとうと決して笑わず、笑わせられない自分(と一族の罪)を突きつけてくる明子に「立派な子を生んでくれ」と真顔で言えるようになった道長は、やはり、まひろに素直な激情をぶつけていたあの頃から随分遠くに来てしまったし、そんな明子と子を成せる道長こそが、実は兼家パパの見事な正論「政=家の存続」を最も受け継いでいるのではと、こちらもまたじわじわ証明を重ねているわけですが。
・まひろに漢詩で託された志を政の世界で果たそうとすればするほど、まひろを女として幸せにする男には決してなれないし、まひろと良き友として笑い合えていた頃の三郎からも遠く離れていくんだなあ。
婿入り時わざわざ後生大事に持ってくるぐらい今の政治家としての道長を形作っていると同時に、文箱の奥底に隠しておくぐらい遠い過去のことでもある、まひろの漢詩。
・それにしても同じ恋文を見つけるでも、微笑ましい兄妹ゲンカから母の長男ベタ褒めでオチがつく道隆一家の平和さと、漢詩を挟んで互いに水面下で行き交う情報が複雑混戦している倫子さま&まひろとのギャップよ…。
・言葉の遅い娘ののんびり具合を夫に似ているのだと愛おしく笑うのは、書物は苦手な自分と夫の気が合う証として、文も寄越さずいきなり訪ねてきたイレギュラーな馴れ初めに蓋をしておける理由でもあったはずで。
その夫がまさか、女からの漢詩を大事にしているというのは、相当のショックに違いなく。
・まひろの漢文解説、自分の文を道長がまだ持っていた動揺からの早口多弁なわけですけど、倫子さまからしたら、いつもの空気読めない漢文オタクまひろさんでしかないし、そもそも まひろは文の書き手だと想定すらされないところが、おかしくも切ない。
それでも、漢詩だから殿御からということにしておくと言えてしまうのが、倫子さまらしい。
段田さん兼家を筆頭に前回から4歳年を取った演技が皆さん素晴らしかった今日の回、黒木華さん倫子も、おおらかにサロンをまとめていた主人役のお姫様から、さらに一段おおどかな風格が増してきてて、惚れ惚れしました。
・少し前の回で、雅信パパが倫子のことを赤染衛門に聞いたと少し話したら、彼女とはそんな話をするんですか!と穆子が少し嫉妬する一幕がありましたが、今後、彰子にまひろが仕えるようになったら、道長と倫子の間でも同じ会話が交わされたりするのでしょうか。
でも、今日の倫子さまの収め方を見ていると、彼女なら、たとえ まひろのほうが彰子のことを理解できたことがあったとしても、賢く感情をコントロールしそうな気がする。
・道長に託した志とは別に、自分の道は何かと考えた末、人々に字を教えようとするまひろ。
あ!と思ったのが、彼女が乙丸とそれを始める場所は、第6回で直秀たち散楽一座が練習をしていた場所のすぐそばなんですよね。あのとき印象的だった、まひろが彼らに駆け寄るため渡った橋が後ろに大きく映っていて、嬉しくなってしまいました。彼らが練習していた橋の向こう側では、子供らのチャンバラごっこも見える。わあ、泣く。
(※ついでに、この思い出の橋が印象的に映り、散楽一座に駆け寄るため まひろが渡ってたなあ…と思い出していたら、今日の回ラスト、まひろと道長が土御門殿で、橋廊のこちらとあちらの両端で固まったところで続くになったので、次回は、この橋を果たしてどちらが渡るか渡らないかの話から始まるんだなあとも思ってる)
乙丸の頼りなく、でも姫さまのため一生懸命で健気な呼び込みに、ああここに散楽一座の誰かがいてくれたらなあ…としんみりしつつ、人目もはばからず地面に字を書くまひろの夢中な表情に、あのとき橋を渡って散楽一座のほうへ駆け寄り、笑える話を自ら提供しようとしていた彼女の心意気が、彼らが死んで葬られても潰えていないのだと感じられて。
代筆業を「私が私でいられる場所」だと言い切り、散楽一座に「おかしきことこそめでたけれ」を学んでそのとおりの物語を書いた まひろが、今度は人に生きるための字を教えようと試みる。
随所に「やがて『源氏物語』を書く女」と分かる要素を挿んでいつつも、この まひろさんがどうやって最高権力者の庇護下で自分の力を注ぎ込む傑作を描くことになるのかまでには、まだまだ更に、二転も三転もドラマは回転していかなきゃならんのだろうなあ。
・物語と少し外れたところで今回ちょっとツボだったのは、道長にちょっとキュンとなってた実資さんの表情です。インパクトありすぎて、遠近法が感じられない。
兼家パパが実資の「好きじゃないが正しい」基準から外れた途端に、道長が「正しい」にインしてきた、これもまた世代交代だなあ。
ずーっとぶれない実資がどう反応を示すかは、作中でその人物が今どういう立ち位置なのかを示すある意味リトマス紙になるのかもしれない。
となると、史実なら後年、小右記に出てくるように紫式部との接触もあるはずなので、今作での実資さんが宮仕えまひろにはどんな反応を示すのかが、ちょっと楽しみですね。そのとき、まひろはどんな人間になっているのかというリトマス紙。

