2025映画初め/侍タイムスリッパー
2025/01/01(Wed)23:40

毎年恒例の元日映画館。
今年は、去年夏からずっと気になっていた念願の『侍タイムスリッパー』にしました。やっと見られた!いやあ、楽しかった! 前評判どおりストンと素直に笑えて泣けて、青空のような心地で映画館を出られる作品でした。

突如現代にタイムスリップしてしまった幕末の侍が、やがて時代劇の斬られ役に生きがいを見出していく。
主人公が戸惑いながらも人の善意に助けられ現代に馴染んでいく過程は、クスリと笑えてホロリと人情もあるタイムスリップものの王道ですし、そこへ、斜陽となりつつある時代劇を何とか盛り上げようと情熱を注ぐ助監督や殺陣師などが入り乱れるバックステージものの熱いストーリーが絡んできて、後半をぐいぐい一気に牽引していくのが、実に気持ちいい。

何より主人公高坂の、幕末の京都に来ていた会津藩士という出身設定が、映画のベースとして終始効いているのが、すばらしく好き。
中盤までは、斬られ役に参加する高坂が「坂本龍馬」や「新選組」に本気で反応する(と周囲とのギャップ)など、物語上のささやかな要素になっていた彼の背景。それが、やがて後半でタイムスリップの根幹そのもの、ある男との幕末からの因縁に話が及んだとき、微笑ましいタイムスリップものと見ていたこのストーリーにふっと重さが付与され、幕末会津藩の悲劇を抱え込みさまよう一人の無名の侍がその無念を百数十年の彼方で打ち消すまでのストーリーとして着地していく。時代劇であると同時に「時代劇」そのものが題材でもある二重構造の映画として、この帰着には大変痺れました。
劇中で何度もその軽さが強調されていた竹光の殺陣が、クライマックスで胃の痛くなるほど重たい真剣の斬り合いになったように。

また、映画だからラストのその殺陣も竹光だと分かって見ているのに、本気でハラハラしちゃうぐらい、作中で「竹光」と「真剣」の違いをそうだと思わせる殺陣技術とSEの付け方が巧すぎるんですよね。
そんな細かい積み重ね一つ一つがあるから、白米の握り飯を磐梯山の雪に例えて感激し、いちごのショートケーキの甘さに「日の本は良い国になった」とむせび泣く、この愛すべき人柄の高坂が、それでも会津藩士として真剣での斬り合いを望むしかなかったラストには説得力しかないし、その果てに選んだ結末に心から良かったと思えるのです。


王道のタイムスリップもので、心温まる人情噺で、夢見る助監督や大部屋俳優たちのバックステージもので、時代劇への応援歌。そして、ひとりの会津藩士が、もう一人とある志士との因縁を通し、悲劇の向こう側へ進み再生していく幕末ものでもありました。

1年の始まりに、いい物語を摂取できた。

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