今夜で配信期限が来てしまうので、いんこミュをギリギリまで見倒しています。
えーん、やはりこれ円盤化してくれないと、永久に映像くださいbotになる… 最高だったあの『新選組』歌舞伎の映像が残っていない一点だけでも人類の損失だと思っているのに。
・ハムレット稽古パートで、万里子の初恋ソングのとき、横でアンサンブルの女子組2人がさりげなくラインダンスしてるのが、ものすごーーく手塚マンガらしい画で大変キュート。完全に、50~60年代手塚マンガで急に始まるミュージカルパートの丸っこい描線のモブなんですよ、あそこ。
・ないない初恋ソング中、いんこが悪戯で劇団員たち皆にオカッパカツラ+サングラスをさせて千里刑事を見つめさせるのは、原作の「犀」要素もちょっと入れてるのかな。
・それにしても、ブンブン手足を大きく振り回す仕草といい、本当に縮んで見える鳥アレルギーのシーンといい、千里刑事が手塚マンガそのまんまで、どういうことなの……と慄く。いんこの「キザで風来坊でちょっとかわゆいタダの男の子」再現ぶりといい、宝塚スターすごい。
歌舞伎『新選組』で、きっちり歌舞伎でありながら手塚マンガの見事な再現にもなっている立ち廻りを見たとき、そうか、戦前戦後の時代劇作品が歌舞伎の影響を受けているのだから、その影響下で描かれた手塚マンガを歌舞伎に逆輸入しても親和性高いに決まってるんだなあと妙に納得したのですが、今回も同様、手塚ヒロインに(たとえ80年代作品でも)宝塚成分がずっと入ってると考えれば、千里刑事を元宝塚スターが演じてしっくりハマるのもまた当然なのかもしれない。
・やはり手塚マンガ、スターシステムといいキャラの描写といい演劇性が高いので、舞台という媒体が一番合っているのかも。
・さっちゃんの9歳設定。そういえば、陽介くんに古武良先生が家庭教師でつけられたのも小3=9歳なんだよなあと。
いんこからしたら、目の前で、弱い存在の9歳の子が傷つけられたことに強く憤り犯人を捕まえると泣いている刑事さんは、かつて傷つけられていた(そして誰にも助けてもらえなかった)子供の自分を、その孤独の先で待っていてくれた少女なんですよね。記憶はないとしても。
・青い鳥パートのAI発表会で、いんこがチルチルミチル役の子たちに「2人」とも逃げろと声かけてるということは、やはり前半のトミーはいんこに見えていない幻なんだなあ…とここで改めて確認させられて、ちょっと切なくなる。
・終幕パートの陽介といんこ、台詞が交錯するとき、どちらがどちらを言っているか分からないぐらいシンクロしている瞬間が度々あって凄いなあ。単に声質が似ているというより、息の吐き方など技術でさらに揃えている感が、また。
・陽介が初めて見たトミーの舞台。終わって力が抜けた瞬間にトミーが、誰も寄せ付けない厳しい顔にふっとなるギャップが、トミーの実体化解釈としてとても好きで。陽介との師弟関係が固まるまで、実はずっと目が笑ってない”道化役者”。原作トミーには、楽屋に来て「ワハハ 一本やられたな」と肩を叩くぐらいの知人はいたけど、ミュのトミーはもっと凍てつく孤独の中で生きてきた雰囲気がある。
・いんこのコートを赤色にしたの、舞台映えとして大正解で天才だし、原作では独自要素ほぼゼロ=新たにデザインしなければいけない少年陽介くんの服を緑アーガイルニットにしたのも大天才。
・「僕は昔子役だったんだぞ~!」、つまり今は役者してないらしい我利也くんが、それでもいんこ最後の舞台には、楽しみだな~とウキウキ訪れる程度には演劇にまだ関心あるらしい様子なのが、ちょっと微笑ましい。
もしかして、いんこの今までのお仕事でもどこかですれ違ってませんか。有名な俳優だという親御さんも一緒に来てて、高い宝石とか盗まれてやしないか。とスピンオフ二次創作で一冊薄い本描けそうなぐらい、ミュ我利也くんのキャラが立ちすぎてる。
・いんこミュ、全体にほぼパーフェクトで解釈一致だったんですけど、唯一、トミーと陽介がバーミンガムの死をラジオで聞いて「天罰だ!」とハイタッチ?するところだけはちょっと違ったかなあ。やはりあそこは、バーミンガムが殺されたとはつまり、自分にもその同じ「天罰」=死が追いかけてくるのだとトミーが理解し、短い間に淡々と受け入れていく、辛く重たい原作の表情変化がとても好きなので。
とはいえ、ミュでここは舞台装置の集約とともに過去と現在も交錯しながら重なっていく演出が凄まじいクライマックスだったので、いんこが父に向けてこれから行う復讐の意図を押し出すため、不可避だったのもまた分かる。
(よく考えると、あそこでトミーの横にいる陽介が学ランなのに、シカゴからの逃避行場面だと間違えようがないのが、演劇の嘘として面白いし、積み重ね方の妙)
・考えてみれば『七色いんこ』、いんこだけに限らず、いんこが泥棒だと知っててなお代役を頼んでまで幕を上げようとする「ショウ・マスト・ゴー・オン」精神な愛しい演劇バカたちの物語でもあり。
ミュのメインソング「To be or not to be」が、籠の中で囚われたまま生きるのかと問いかけ、「生きろ」と繰り返しながらも、「死ぬなら オンステージ!」と締めるところが、そんな”板の上で死ねたら本望”精神の凝縮だし、しかしその大合唱にソロで力強く「生かしてよ」と叫ぶように挿むのが万里子/モモ子なのも、またミュージカルソングとして最高でしたねえ…。
本当にミュの好きなところ、いくらでも挙げられるんですけど、千里刑事といんこの未来を信じさせてくれる、希望と優しさのある脚色だったことが何より一番かもしれない。

