月刊『ドラマ』3月号
2024/03/02(Sat)23:46

月刊『ドラマ』3月号掲載の『光る君へ』第1~3回シナリオ読了。面白かった~。

やはりシナリオを読むと、ドラマがどう作られていくのか、その過程まで覗けるようで楽しいなあ。

大石さんの脚本を読むのは今回初めてで、まず印象的だったのは、無言時の括弧書き台詞が多く、またその描写が明瞭なこと。

晴明が予言する凶事に「(ゾ~)」となる須麻流、入内して初めて見た帝に「(胸キュン)」な詮子姉上、娘の代筆仕事を叱ったら激しい反抗を受け「(ビビる)」為時、わしも三男だ!と父兼家に叱られ「(あ、そうか!)」と今さら呑気に気づく道長、勉強会で自分の文字に見惚れ近づいてくる道長に「(何かうれしい)」行成……等々。

ここまでドラマを見てきて、無言の表情で心情を饒舌に語るシーンが多いのを感じていましたが、そこで彼ら彼女らが実際何を考えているのか、どんな性格なのか、シナリオの指定が意外ときっちりしているんですね。今のとこ出番や台詞が少ない人物でも、例えば惟規は「生涯その場しのぎな生き方をすることが既に現れている」など説明が細かい(ここちょっと笑った)。
第1回で道兼が、何に苛立ち続け、なぜ遂にあの暴発をしてしまうのかの過程も、心の内の積み重ねが相当丁寧に描かれている。

これ、役者さん側としては人物像と演技プランを組み立てていくのに、助走段階からすごく分かりやすい脚本なんじゃなかろうか。
インタビュー記事等で、実はあのシーンはアドリブで…みたいな話もいくつか出ていますが、芒洋とした中に鋭さが垣間見える道長も、怒りと好奇心をいっぱいに抱えて世の中に食らいついているまひろも、他の人も、中の人たちの演技が魅力的なのはもちろんとして、方向性が最初から風通しよく明確にされた上で肉付けされた人物像なんだなと感じました。

(ていうか、光君の道長推しの方はぜひともこの脚本を読んでいただきたい。無言時の括弧内台詞がいちいち非常に可愛くて可愛くて、ほんとこの人「一緒にいるとホッとする」系のんびり末っ子だな!!と机ドンしたくなるので)

そういえば『いだてん』のときは、例えばあえて「……」しか書かれていない五りんの台詞の、その無言の意味を神木さんが必死で考えたり、脚本ではたった1行の何気ないト書きを演出美術がぶっとんだシーンに仕上げたら、それがまた物語の流れとしてしっくり来たり、クドカン氏が現場に(いい意味で)丸投げしていた裏話が結構あり、それが意外でまた興味深く。

どちらがどうという話ではなく、同じ大河枠でも書く人によって脚本の個性がここまで違うのが面白いし、その個性が違う脚本を映像に創り上げていくプロフェッショナルのお仕事もまたそれぞれなので、やはりドラマは総合芸術なんだなあと改めて思った次第です。

 

そして、シナリオ読みのお楽しみ定番、ドラマ本編でカットされたシーン。今回もかなりいろいろありました。
わー、惟規くんがまひろ姉上に恋文代筆おねだりするとか、再会した三郎を思い伊勢物語の歌を呟くまひろとか、もし本編に入っていたら結構印象が変わるのでは。映像撮っていたら特典でください。見たい。

何より右大臣家の闇の中、道隆兄上の立ち位置が変化していく予感を繊細に書いていたことが、複数カットされたシーンを見るとよく分かりますね。
特に第3回で、転んだ定子さまを貴子さまが自分で立たせた場面。カットされた部分では、さらに兄妹らの歓談が続き、父上を立てるよき嫡男な道隆兄上に対し、道長や詮子は、兄上は優しいからきっと父上よりいい政ができると和やかに話してるのです。この会話があってからの第4回であの場面、毒の件を知って父に食ってかかり、道隆に「兄上は御存じないですか!嫡男のくせに!」と不信感をあらわにする詮子だったのかと思うと、絶望度が一層増すなあ。もとから合わなかった父や道兼だけでなく、道隆兄上には期待してた分余計に失望を深める過程の細かさ。中関白家との微妙な関係の始まり。

あともう一つ興味深かったのは、まひろが倫子さまへ抱く感情の変化。
初めはお姫様たちに「(違和感炸裂)」していましたが、まひろの失態で空気悪くなりかけたところを倫子が笑って場を和ませたら、彼女が場を主導し治めていることにちゃんと気づき、「この人には、人を率いる力がある」「上に立つには向いている」と見抜き、素直に認めている。これがまひろの洞察力だし、美点なんだなあと。
今のとこ、まひろは道長とだけでなく倫子さまともソウルメイトになってくれ派なので、脚本のここが非常に嬉しかったし、解釈一致でガッツポーズでした。ありがとうございます。

 

今回掲載は第3回までなので、直秀出番が少なかったのがちょっと残念。別の回もまた何かの形で読めるといいなあ。ききょうさん初登場の漢詩会や打毬シーンのト書きも、大石脚本ではどうなっていたのか、とても気になります。

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