光る君へ第41回
2024/10/27(Sun)22:06

・昔の三郎と同じように「怒るのが苦手」と笑う賢子。直秀のような自由さをまとう双寿丸。
次世代の若者2人の清々しさが、道長まひろ直秀3人の遠いかつての青春を懐かしく思い起こさせる、このタイミングで、直秀の死を土台にした まひろと道長の約束が今ではすっかり変貌していると突きつけてくる畳み掛け方に、ああ今年の大河もいよいよ終盤戦に入ってきたなあ…と思える秋深し。

・光君の道長、いわゆる主人公補正できれいになっているのともまた少し違って、本人はあくまでも「まひろとの約束を果たすため」「”いけにえ”にした娘にせめてもの幸せを整えるため」「公任や斉信ら旧友とも手を携え波風立てず皆で政を行うため」のつもりで行動しているし、利害がほぼ一致する共同体にとっては確かにベターな調整型リーダーなのですけど、その共同体から一度はじかれた光君ききょうさんフィルターの定子さまサイド中関白家から見れば(史料上よりやってることの描写は半減してるとはいえ)確実に嫌がらせしてくる悪役以外の何ものでもない、という描き方になってるのが面白いですね。

そもそも「怒るのが苦手」ということは、基本的に淡白なのが光君の道長くんで。それがまひろ以外の女=妻たちへの平等に優しく平等に冷たい接し方に出ていたし、流罪にする伊周を表情ひとつ変えず母と引き離すときのように酷薄さと解釈され得ることも多々ある。

自分自身が淡白だから、伊周のプライドを理解し切れないし、彰子入内と定子出産時期をぶつけるなど、中宮定子(=背後にいる伊周ら)の力をじわじわ削ぐ政治的行為が精神的にどれほど傷を深く残すかまで慮れない。
政治バランスを皆が理解し辛抱できると思っちゃうから、出家するほど追い詰められた顕信の苦悩には気づけない。(息子の出家を「殺された」と詰る明子の怒りで、定子のあの突発的な落飾がやはり絶望からの自死的な意味も込められてたと、改めて思い起こさせられるのがまた)
中継ぎの帝へ嫁がされた意味では実質こちらこそ”いけにえ”な妍子の鬱屈と、その発散に贅沢と火遊びしか知らないほどに放置されてきた子の悲惨さを把握できていない。

この辺の機微の疎さに、そういえば道長くん、第1回から書物は苦手だと読まないし、実は物語にあまり興味のない(反動のように直秀らの散楽は楽しむ)少年として描かれてたことを思い出すのです。
物語の力を最大限に利用するスポンサー様になり、妙なところで物語と現実の境目を曖昧にするほど心配しながら、一条天皇が崩御=中宮のもとへ呼ぶ必要がなければもう書く意味もないのではとあっさり考える、つまり未だに作家まひろの「物語は生きている」創作熱も、もはや政治的意図を超えて物語の続きを待ちかねているだろう読者のことも理解し切れていない、この道長のぼんやり具合に、創作者側として大石さんの引いた目線を感じている。

創作者側の熱と受容の多様さを中盤じっくり描いてきた上で出される、編集者兼スポンサーさまにしてソウルメイトなはずの道長が示す、このちぐはぐさ。
やはり、ここからの宇治十帖は、誰かの依頼ゆえでも何でもなく、まひろが自分自身の描きたいものを純粋に突き詰めていく流れになるのかな。新楽府を通した帝王学が実を結び、国母への歩みを始めた彰子さまのサポートと並行して。
そこには恐らく、「お前との約束を果たすため」と言う道長を戸惑いの目で見つめるしかなかった、あのまひろの言葉にならない思いも含まれるはずで。


・上述したように、秋を一層感じる大河終盤恒例、次世代若者の青春ターン。
親世代のあれこれを踏襲するのもお馴染みですけれど、しかし双寿丸は、力なく惨殺された直秀ら一座とは違い、庇護してくれるらしい殿の下で集団戦術を学んでいますし、賢子はそんな双寿丸との付き合いを堂々と親の前でも見せ、家へも自由に招けてますし、そして彰子さまも、父の政治センスを受け継ぎながらタッグを組めたのは末の弟だけだった詮子姉上とは違い、「父上のより良き政のため」の名目で弟たち皆を招集できている。
確実に変わりつつあるものの存在が、主人公世代が突き進む先への不穏に一抹の明るさを加えるのは、やはり大河の積み重ねだから味わえる醍醐味だなあ。この時期になると特に、見続けてきて良かったと思える。

・ところで、双寿丸の猛々しい話を賢子が面白がり、少しずつ仲を深めている様子に、そういえば、あかねさん=和泉式部が藤原保昌と再婚するのもこの少し後だったか、と思うなど。
あかねの「恋をしているから」、もしこの時点で保昌と付き合ってたらどうしましょう。彼女の仄めかしに頼通がちょっとときめいてたけど、あれでお相手が実は父の家司で、しかも自分とは似ても似つかぬ武者だとしたら、ちょっと頼通若様がおかわいそうである。がんばれ。

・双寿丸の殿が平為賢ということは、やはり刀伊の入寇は結構尺を取ってくれるんでしょうか。
中盤から少しずつ存在感を描いてきた平安期武者の総仕上げとして、どのぐらい描いてくれるか。場合によっては、今年の最終回後に『平清盛』『鎌倉殿の13人』を続けて自主再放送したくなるかもしれない。

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