3か月でマスターする世界史
2024/06/19(Wed)22:26

4月から毎週楽しみに見ていたEテレ『3か月でマスターする世界史』、本日最終回。

遊牧民と農耕民の交易、キリスト教イスラム教それぞれの伝播と政治文化圏域の拡大、モンゴル帝国のユーラシア統一と瓦解を経て起きた東西の融和と再編、そしてアジアとヨーロッパの優位逆転から激動の近現代へ…と、3か月=全12回×30分で数千年を駆け抜けるスピードだからできる大胆な俯瞰、中国史専門の講師だからこそ貫かれるユーラシア視点が、ぐいぐい聞かせる大変興味深いシリーズだった。

様々な形の「帝国」が試行され、しかしそれでも立ち行かなくなり「国民国家」へ移行していく大きな流れ。その中で、一般に”発見”や”進歩”のイメージで語られる16世紀以降ヨーロッパ諸国の活発な動きと、押されていくアジアとの対比を、決して体制の優劣で語るのではなく、世界経済システムで一方がふと後退したタイミングで、もう一方がするっと優位に立てるルールをつくったとする相対的、かつ政治と経済を密接にひもづける視点は、一般的なヨーロッパ視点世界史とは別にやはり持っておいたほうがいい観点なんだろうな。現在ある様々なシステムを当たり前、もしくは無条件に優れていると考えない思考の土台とするためにも。

緩やかに広域多民族を統合していた「帝国」も、グローバルな勢力の保持が難しくなっていく中で立ち上がっていく「国民国家」も、またそれぞれの体制で使われた経済文化の制度も、その時代時代に応じ存在していた意味と前後の流れをざっくりでも認識すれば、何かが何かを打ち負かしたような進歩史観的な考えに極端に陥ることも、また逆に過去の”歴史”を切り取って美化し取り戻すべき栄光だと幻視することもないわけで。現代への道筋として、数千年の流れをつかむ醍醐味。

そして、ここまで駆け足で解説しながらも、今ここにある問題の根源を遡るために足元の地層を深く掘り下げるのが歴史を学ぶ意義なのだと、その結論を最後にじっくり念押しすることで、決して短絡的な構図だけで”分かった気”にならないよう釘を差し、番組の示した大枠から先に興味関心の幅を広げさせて閉じる締め方に、Eテレの矜持を感じました。

ああ、面白かった。

偶然かもしれませんが、4月から刊行が始まった講談社メチエの『地中海世界の歴史』シリーズ。こちらは逆に、1年以上かけて出される全8巻でオリエント視点の地中海史、つまり、『3か月でマスターする世界史』第1~2回あたりをじっくり掘り下げていく内容なので、ちょうど番組前半のころ1・2巻を併せて読めたのも、さらに複数の視点が持てて楽しかった。
こちらは今1・2巻までで、文字の簡素化=アルファベットの誕生、多神教から一神教への変化、貨幣の出現…とほぼ同時期に起きた単純化・普遍化の流れが、物事を抽象的に考える精神的土壌を形成していったところまで来ているので、来月出る続きの3巻ギリシャ編ではどう展開していくか、楽しみです。

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