手塚FC京都の石川会長が、今年4月に亡くなられていたとのこと。
遅れて生まれてきた手塚ファン世代の一人として、FC京都の復刻本にはもう言葉にしきれない恩があるので、ちょっとこの訃報はズシリと堪える。
手塚マンガといえばファンになってすぐぶつかる壁が描き直しの数々。
しかし、なんだかんだ言って、手塚先生が手を加えた単行本こそが最終形態としてご本人の意思なのでは?と生意気に考えていた中学生の自分が、衝撃を受け、その考えを180度転換したのが、古本市でふと入手できたヒョウタンツギタイムスの『ジャングル大帝 漫画少年版』復刻号なのです。
あの丁寧な作りの復刻で読めた『ジャングル大帝 漫画少年版』の美しさ面白さは、いくら諸事情あるとはいえこれを今の読者が読めないだなんて先生ご本人の自由範囲を超えて文化の損失…!!と震えるに十分の内容だった。
FC京都発行の復刻本は、インク色や紙にこだわりつつも、本のつくり自体は手にとって読みやすい装丁で、しかも赤字覚悟で刷られていたので、学生でも必死で金を貯めれば何とか買える値段だったのが、本当にありがたかったな。
毎年夏、石川古本店が出店されるデパートの古本市を目指し、コツコツ金を貯めてはFC京都の発行物を集めていくのが楽しみでした。石川古本店のブースで、漏れ聞こえてくる店主とマニア客との濃い会話をうっすら聞きながら、ガラスケースに収められた憧れの初期単行本や付録本をうっとり見つめるのも。
『ジャングル大帝』の人間と動物界が複雑に絡み合う父子三代大河ドラマとしての凄みは漫画少年版を読んで深く実感できたし、『ロック冒険記』は、自分が手塚ファンになった原点作品でもあるので、あの書き換えられたラストの元版も含め雑誌版のリアルタイム時熱気が復刻本ならではで嬉しかった。『火星から来た男』関西興論新聞版は手塚先生がいかに海野十三大好きか分かってニマニマしちゃうし、『珍念と京ちゃん』に描かれた戦後すぐの風俗や空気は、そのまま手塚青年の青春のように感じられた。長らく全集未収録だった『風之進がんばる』も、『ピストルを頭に乗せた人々』『新選組』から『陽だまりの樹』への系譜に連なる一作として、やはり読めて良かったありがたい復刻だったなあ。(こちらは今年やっと、いそっぷ社の単行本に完全収録されてめでたい)
訃報を受け、2004年発行『手塚治虫バカ一代』をパラパラと読み返しました。
古紙回収業を拡大しつつ紙の束からマンガを収集し、マンガ専門古書店とFCを立ち上げ、人を巻き込んでいくご本人のエネルギーが凄まじいとともに、そんな石川氏の人格に深いところまで影響を及ぼし突き動かしていく手塚先生との邂逅、思い出エピソードの描写がとても温かく強烈で。
だからこそ、古本取引がただファンだけのものでなくなっていく過程で、とある心無い”ファン”の行為でとうとう石川会長がポキっと折れてFCを閉じた経緯も、今読み返すと胸が痛い。
手塚マンガに限らないことですが、史料保存や継承、研究が長らくファンの善意熱意に支えられてきた側面が強いマンガ界の、象徴のひとつでもあった手塚FC京都。その石川会長の訃報、そして手塚先生を直接知っている方がまた一人いなくなってしまったことに、時代の一区切りを感じている。
次世代ファンにも手塚マンガをつなげてくださる沢山のお仕事を、ありがとうございました。どうか安らかに。
※訃報の元ソースは京都新聞のこちらの記事冒頭なのですが、有料プランじゃないと全部読めないんですね…。出品された手塚先生の原画について、詳しいニュースどこかほかに出ていないかな。ていうか公式動いてないのか。

