光る君へ第4回感想メモ
2024/01/28(Sun)22:43

・光る君へ第4回感想メモ

・三郎、やはり右大臣家三男として引くべき一線は持ってる子なんだなあ。自分の家を風刺する散楽を客として笑って見ていても、自分の素性を分かった上で「横暴」と直接踏み込んでくる直秀には、「そういうことは散楽の中だけで言え」とぴしゃり釘を刺す。
まひろの嘘を面白がり、自らの家が滑稽に描かれる散楽さえ楽しむ三郎の度量は、帝や后や大臣らの生々しい駆け引きが描かれる創作物語を面白がり、スポンサーにだってなれちゃう将来の道長を予告して見えてましたが、直秀にこうも言うあたり、もしかしたら後半、政治利用すべき物語が作者の紫式部によって自分の意図を超えようとするとき、権力者として似たようなことを言ったりするんだろうか。まして、このドラマの性格の まひろが描く物語ならば。

・そして今週、何もかも踏みにじられた詮子姉上も、いよいよ懐仁という手元の最強カードを抱え込んでゴッドマザーへの道を歩み始める。
まひろの創作意欲の源泉が、母を殺され犯人の咎を暴くこともできない鬱屈や父への反発から始まる、この世の理そのものへの「怒り」になるんじゃなかろうか、というのは序盤から徐々に積み上げられているので、このドラマの詮子姉上に育てられた一条天皇がなぜ『源氏物語』を好ましく思うのかが、単に漢文知識への共感だけでなく、無意識のうち母に注がれた魂の共鳴のような何かになるとしたら、ある女とある女の怒りが創作を通して合流するという、なかなか胸熱なことになるのでは。

・『源氏物語』と猫…といえば連想するのは、女三の宮。ここまで何度も三郎=光る君、まひろ=紫の上のイメージを重ねてるのを考えれば、帝の血を引くお姫様で将来道長の正妻となる倫子さまは確かに、紫の上を押しのけ正妻の座に着く帝の娘・女三の宮ポジションではある。しかし、あちらの猫ちゃんは、そそっかしく御簾を引き上げて迂闊な女三の宮の姿を柏木に目撃させてしまい悲劇のきっかけをつくりますけど、賢い倫子さまの猫ちゃんはお行儀よく抱っこされてそんなことはしないし、香箱座りな猫ちゃんのガード固さよろしく、倫子さまもまた女好きの花山天皇に自らの顔を晒さないのですね。
そして代役を引き受けたまひろが、舞姫として男どもに“見られている”立場のようで、実は彼女のほうこそが三郎と「ミチカネ」を発見した、“見ている”側なのも面白い。

・三郎がまさか右大臣家三男とは知らず庶民だと信じ、自分のほうが「身分など気にしない」選択ができる立場だと思っていた まひろは、実は自分こそが選ばれる立場だったとまだ気づいてなかった。宣孝になぜ身分などあるのかと食ってかかり、『竹取物語』かぐや姫の身分何するものぞな態度に痛快さを覚えてしまっていた彼女の解釈と怒りは、三郎の本当の身分を知り、足元が逆転したとき、今後はもっと切実なものへ意味を変えていくのでしょうか。そして、若く賢しらな反抗心で拒んでいた父への理解、学問とは何かの答え(それは自身の「人」としての矛盾に向き合うことでもある)も、また。

・この、選ぶ立場かと思っていたら実は選ばれる立場だったことへの残酷な逆転が起きているのと同時に、しかしまひろが女として見られる側のようで実はじっと見て冷静に注意深く観察する側でもあるという捻じれの複数並立に、時代の制約として当然彼女が今後直面するだろう困難と、それでも精一杯もがき抗っていくぼんやり明るい道筋が見えるのです。

・そういえば、今日の回で特に面白かったのは、序盤で宣孝が三郎の正体に気づいているのか、どちらとも取れるところで。まひろが身分の難しさを嘆く台詞で、ただ貴族と民(=この時点でまひろが思う自分と三郎)だけでなく、貴族の中の格差(=本来のまひろと三郎)にも言及しているので、宣孝が三郎を庶民と勘違いしていても道長の身分を知っていても、どちらでも話が通じているんですよね。まあ宮中で右大臣家三男の顔を宣孝が見ていないはずがないので恐らく後者なのでしょうが、「あの男には近づくな」の意味が2人の間で三谷劇的なすれ違いになっているのが来週以降、しかもこの2人の間でどう効いてくるか楽しみです。

・やー、それにしても今のところ、本当に毎週まとめ方がうまいなあ。
馴染みの薄い時代を過不足なく伝えるナレーションと程々に現代的な台詞、素直に心情が読めて感情移入できるキャラクター、隅々の美術まで凝っているのに情報量多すぎないようにも調整されている画面、性愛もまた政治だった時代を描きつつ下世話にならないギリギリラインでとどめる演出。さらっと引っかかりなく45分見られるという、何気にすごいことを毎週やっている。
幕末戦国以外の時代ネタもあれとかこれとかいろいろ大河枠に願っている身として、珍しく平安中期をやってくれた今年は大いに期待しているので、このまま突っ走っていただきたいです。

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