虎に翼第1週
2024/04/05(Fri)22:29

ああ、面白かった~~~!
第1回目からもう明確に押し出されたテーマが素晴らしくて、その魅力を毎日更新していって、そして金曜日の締め方と次週へワクワクする予感まで、完璧な第1週だった。

伊藤沙莉さん主役、かつモデルが法曹の方と発表されたときから、なるほど理論と言葉で闘う法の世界となると、そりゃ沙莉さんの歯切れいいハスキーボイスを存分に堪能できるドラマになるな…と期待していたら、まさか初週からこんなにも沙莉さん演じる寅子が理屈をまくしたてる滑舌と間の良さを惚れ惚れ味わえるとは。ありがとう脚本。ありがとう演出。

で、第1週5日間を見終わって、何がここまで切れ味気持ち良いんだろうかと考えると、このドラマ今のところ、少なくとも主要人物は皆、いい意味で対等に頭がいい人ばかりなんですね。言い換えれば、ただ物語を転がしたり盛り上げたりするため「愚か」な役割に振り分けられる人がいない。だから、妙な停滞がなくサクサク話が進む。テーマと語り口の合致。
女性の人権が切り開かれてきた道という、今なお切実な問題を半年間描いていくドラマを見るにおいて、この語り口はすごく安心感がある。

ふわふわ甘い愛されガールな風貌で寅子を「お子ちゃま」と嗜める花江も、決して寅子の疑問と抵抗そのものを否定しているわけでなく、むしろ自分と全く違う彼女の在り方と努力を認めているからこそ「強かにいけ」とアドバイスできる視野の広さがある。

母はるさんも、自分がまず「家業のためになる結婚」を蹴り上京できる結婚を選んだ時点で、実は前世代のプレ・寅子だったわけで、娘が見合いをせず大学に行った先の苦労を見通し心配してしまうだけの見識は、裏返せば、地獄に行くと覚悟を決めた娘に、法学部に行くなら買い与えるべきは六法全書だと真っすぐ書店へ向かう理解の速さでもある。

そして、本日の回ではやや巻き込まれ事故的に男代表にされてしまった桂場も、ただ「女」を偏屈に見下しているだけの男でないのは、第3回で笑った男子学生を窘め、寅子の発言を純粋な疑問として尊重していたことから分かるし、「君が先陣を切って血を流したとしても何の報いもない」の言葉には、ぶっきらぼうな思いやりすら感じる。(そもそも、何の義理もない女学生の質問にまともに返答し、団子を食べるのをずっと我慢してるだけでも、あの時代として相対的にかなり良い人では、桂場…)

何より主人公寅子が、すばらしくロジカルなんですね。
口癖「はて?」で一旦立ち止まり、疑問を自分の中で消化した上で、でも決して曖昧に受け流さず、それはおかしくないですかときっちり言葉にしていく。
桂場の一見正論な「母親ひとり説得できないのに、この先優秀な男と肩を並べられるわけがない」論を、非常に優秀な母の説得と、今後優秀な男性と肩を並べることとは別問題ではないかと、母=女性を男性より下(説得しやすいはず)と見ていた桂場の無意識の偏見を喝破する、寅子の気持ちよさよ。

この寅子を中心に主要人物同士の関係が、情ではなくロジカルな対話で進んでいくからこそ、結婚という未来に心躍らないのは法制度そのもののせいだと寅子が腹落ちしていく過程、その行き着く果てが第1週として本当によかったなあ。(「すっきりはしないが、はっきりした」という台詞の巧さ)
「無能力者」など当時の女性が置かれていた理不尽な状況において、この先寅子が闘って撃破していくべきは決して、マジョリティの人生を選ぶ花江やそこへ進ませようと願う母はるなどの「女の敵は女」ではなく、またこの理不尽さの上にあぐらをかいて女の口を塞いでいる男たち自身でもなく、それよりもっと大きい、法体系と社会そのものなのだ、と明確に提示される。

虎に翼。寅子に六法全書。
「はて?」と立ち止まる疑問を頭いっぱいに抱えている彼女が、その口を塞がれず思いっきり話してもいい場と理論体系を手にしたとき、それはどれほど伸びやかに羽ばたく翼になるのか。

リーガルエンターテインメントの惹句にふさわしい幕開けの第1週でした。
早速「法」とは何か?が問われるらしい来週も楽しみ。

 


 

第1週を見終わったところで思うのは、今回はモブの演出もまた印象的で。

なんで女はスンッ…として生きなきゃいけないんだ?と寅子が考えつつ学校と家を往復している最中にも、道や甘味屋で背後に映る人々の中に、うつむき歩く小学生女子(2回目登場時では男児にからかわれている)、学校すら行けず奉公しているらしき女の子、疲れきった行商の老女、楽しそうに甘味を食べる御婦人たち、いかにも忠実に夫に仕え続けてきた老婦人……等々、手前の主役級を邪魔しないギリギリのラインで演技を大きくつけている人が数多見えるんですね。

恐らく今後寅子の人生と交わりはしないだろう彼女たちにもそれぞれ人生があるし、様々な背景境遇の彼女たちのためにこそ、きっとこの先「法」が必要になってくることを、さりげなく演出で示しているように思えるし、OPで主題歌の歌詞「100年先」に合わせてか、昭和平成令和100年の様々な職業服装の女性たちが踊るラスト(あそこにちょっと泣ける)に通じるものも感じる。

 

ところで、こういうモブにも語らせる演出。
朝ドラで自分が最初に見ていて意識し、かつ公式からも演出意図としてはっきり明示されたのは『べっぴんさん』が初めてでした。当時の記事が残ってないかな~と探したら、デジタルアーカイブに発見。やったー。
そうそう、これ安達もじりD演出担当週だったんですよ。だから強く覚えていた。
このモブの印象的な使い方が、安達Dがチーフになった『カムカム』では、例えば竹村クリーニング店の前を通る妊婦が、次のカットでは乳母車を押して通って時間経過を示す描写になるなど、さらに発展していたのが思い出され。

で、今回『虎に翼』のチーフ演出(第1週担当)は、『べっぴんさん』チーフでもあった梛川善郎Dなんですよね。『べっぴんさん』時のあの演出が、どこまでがチームとしてのカラーで、安達Dの個性だったかは分からないですが、モブに細かく演出つける手法が『べっぴんさん』から、安達D、梛川Dそれぞれに継続発展しているとしたら、NHKドラマ演出の系譜としてとても面白いなあと、枠を見続ける醍醐味を思った次第です。

< 前の記事 ▼一覧 後の記事 >
Copyright(C) 2008 - 2026 baserCMS Users Community All rights Reserved. baserCMS : Based Website Development Project  CakePHP(tm) : Rapid Development Framework