『新選組』楽描きなど
2024/02/21(Wed)20:34

手塚先生の『新選組』がドラマ化ということで、ここのとこ原作読み返しつつお絵描きしてたものなどまとめ。

 

原作等身の絵柄と、いつもドラマ二次描いてるときの絵柄で描いたらどうなるかなーと実験してみた丘ちゃんと大作。

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特にどなた配役という想定はしてないですが、丘ちゃんは全体に丸いラインの顔、大作は瞼や涙袋が厚くて笑うと顔上半分がキュッとする(なので目だけ笑ってるようにも見える)顔の俳優さんなら楽しいなと想像。

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大作のこの髪型を2.5次元で描こうとすると、つくづく歌舞伎版の拵えが偉大だったことを思う…。ドラマ版ではどうアレンジするのか楽しみです。
とはいえ、大作のあの髪型は舞台、しかも歌舞伎だからこそ再現可能だったことや、過去に手塚マンガの"見た目”のみを忠実に再現しようとして事故った数々のメディア化を思い浮かべれば、今回は案外「幕末」「新選組隊士」要素以外まるっと切り捨てるのも、時代劇の画をつくるため可能性あるだろうなあとは思ってます。
最終的に、ああこれは丘ちゃんと大作だと思えれば、どんな姿でも構わない。(どんなメディア化でも結局思うのはそれ)

 

あのラスト、もしも土方副長が大作のもとへ向かわせるのが丘ちゃんではなかったら妄想。

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大作くん、あの場面で自分を斬りに来るのが丘ちゃんじゃなかったら、たとえ組の中では比較的好意的に接してる沖田さんだろうと、業腹がカンストしそう。

 

主人公の親友にして悲劇的結末の相手という大作のキャラクターを考える上で興味深いのは、この少年が面白いほど無思想に描かれていることでして。
丘ちゃんと対峙する男たちは皆、誠の心を説く近藤も、世界を見に行けと励まし背中を押す坂本も、幕府の犬めと罵る桂でさえ、その思想信条をむき出しにして彼と向き合うのですが、大作だけは、斜に構えた諦観からくる「きみのため」の優しい助言をぽつり丘ちゃんに告げる他は、実は自分自身に持つビジョンや思想らしきものを何も語らないんですよね。
そもそも序盤で、同じく長州の間者であるはずの荒木田らが粛清された報告を笑って見てるし、桂さんの顔だって知らないので、長州とどんな繋がり方をしてるのか謎だし、坂本に顔を見られまいとしている(≒顔見知り?)一方で丘ちゃんの仇とは面識がないあたり、土佐藩との関係も不明。長州の間者だったと明かされても大作の出自と目的という輪郭が曖昧なままなので、桂が言うとおり本当に大作が「勤王の志士」たる信条で動いてたのか、確信できない、ざわりとした余白が残ります。

そんな大作の思想の無さ、執着しなさを思うと、序盤の「きみの腕前をとっくり見せてもらうよ」からラストの「そろそろ やろうか」まで継続し続ける丘ちゃんへの奇妙なまでの興味関心が、余計に色濃く鮮やかで。
最初から丘ちゃんの仇討ちにやたら肩入れし、組のため芹沢と敵対する丘ちゃんの横に並んで常に味方し、剣のため身を滅ぼさないかと本気で忠告し、ほぼ巻き込まれた形でしかない八重&南無之介一派との闘いにも「ぼくたち ふたりだけの問題」といつの間にか主語を拡張して助太刀している。
大作が丘ちゃんのため無私で行動するのがあまりにも自然なので、「親友だから」と読者側も受け入れてするする読んでしまうのですが、それが終盤に来たとき、大作のこの丘ちゃんに対する過剰な入れ込み方と表裏一体な他者への関心の薄さが、実は自分自身にさえ当てはまっていたのだと、親友と斬り合うラスト、自分の命にも頓着していない大作の異様な淡白さによって、改めてぶり返し殴りかかってくるのです。

当初は五稜郭まで描かれるはずだった『新選組』の構想が、どの時点で池田屋までに変更されたかは不明ですが、大作の特異な人物造形は、その思想の無さ(という空洞が却って主人公に最も影響を与える皮肉)といい、そんな大作の執着がたどる微妙な変化といい、全て丘ちゃんがあのラストを迎えるため設計されてるようでもあって。
物語が「主」で人物は「従」と分析されることの多い手塚作品。『新選組』もまた主役2人があの結末に至るための物語ではありますが、大作のキャラクター(に一貫性をもたせる誘引力)が、五稜郭まで行くはずだった物語をグイと引き戻し池田屋へ着地させたのではと考えると、やはり少年マンガの親友キャラとしても、手塚マンガの悲劇パターン友情物語の片割れとしても、面白い人物造形だなと思うのです。

 

 

ただ一つ「誠」があったとすれば、それは
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大作の台詞を読み返すと絶妙に「嘘」を言ってなくて、余計にこの少年の、過去も未来もなく、只いま目の前の親友に見せる笑顔と汁粉への舌鼓だけは心底真実だったに違いないことを思ってしまう。

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