光る君へ第7回感想
2024/02/18(Sun)23:42

・ベタは強い。そのベタ展開をてらいなく、しかもきっちり「王道」へ昇華して見せ切れるストーリーは、恐ろしく強い。ということをつくづく実感した第7回。

・F4の帚木ネタ、あの第3回で終わりではなかったかーー。しかし、ここまで『源氏物語』オマージュネタの数々が まひろ自身の体験として描かれ、また自身のネタさえ散楽一座に脚色して渡そうとする彼女の創作者たるサガを考えれば、この青年たちの品定めもやはり まひろが聴くべきはずで。この無遠慮で残酷な会話に深く傷ついた彼女が、でもやがてそんな会話を繰り広げる貴公子たちを突き放し客観視した上で物語に再構築するとしたら、創作者として凄まじい胆力と執念じゃなかろうか。怒り狂うでも泣くでもなく、ただ黙って愛しい人の文に火をつけ燃え様をじっと見据える彼女の瞳に、その片鱗が伺える。やはり今作のまひろは、己の内側へ情念を深掘りしていくタイプの創作者だなあ。

・それにしても、この道長まひろ直秀三者三様の思いが交錯する雨宿りまでの流れ。幾つものベタ展開をさらさらと淀みなく並行して見せていくのは、やはりここまでの積み重ね方がしっかりと巧いからで。
小麻呂ちゃんがうっかり飛び出す子なのは既に前科がありますし、分かっていながら道長を目で追うのを抑えられない気まずさ、ききょうへの苦手意識もうっすらあるまひろが、猫を探しにあの場をさっと離れるのは、よく分かる。
六条院の一件で抱いた感謝と信頼、さらに散楽も見ていた道長が、身体能力高い直秀をピンチヒッターで思いつくのは自然の成り行きだし、道綱母の存在や兼家パパの「謀略で使った女は抱いておけ」理論が既に披露されているので、道長がいきなり「最近見つかった弟」とやらを紹介しても誰も疑いもせず受け入れるだろうと納得してしまう。

・ベタ、つまりよくある展開とは、それだけ見ている側が期待するからこそ「よくある」わけで。
主人公が探しものに入った場所でうっかり口さがない話を立ち聞きしてしまい、でも相手の姿が見えないためすれ違いが生じるのも、正体を隠し敵対してた同士が傷で「もしやあのときの…」と察するのも、変に捻りを加えずスムーズに転換点へ入るので、フックとしての機能が強い。
ただでさえ馴染みの薄い時代、しかも失意の花山天皇を巡る政治情勢、独自に動き始めた道隆兄上、まひろ道長ソウルメイトの切ない行方、散楽=義賊一味の顛末…と幾つもの並行したストーリーを進めていくための、ベタ展開。そこを陳腐ではなく王道として太く成立させられるバランスが、本当に今更だし毎週言ってもいますけど、やはり改めて面白いし、見ていて気持ちいいなあと唸ります。

・しかし道長くん、淡い初恋を抱いた女の子に大決心して文を送れば、あなたの兄は私の母の仇だ一生呪うと衝撃の告白されるわ、身分と信条を超えた友情を培えてると信じた男は自分が射た盗賊だと分かってしまうわ、彼なりに右大臣家の闇へ抗い生きようとしているのに、そのため手を伸ばした相手に右大臣家の息子だからこそ悉くフラれるの、つくづくお気の毒だ…
盗賊という「人」を射た痛みを我が身にしっかり感じているし、家柄のよい女を嫡妻にしてあとは遊びだとうそぶく友人らにも賛同してはいないのに、彼が右大臣家の三男である限りその人生そのものが まひろや直秀を拒絶する。道兼の「俺たちの影は皆、同じほうを向いている」は、やはり今後週を重ねるごとにじわじわと毒が増していきそう。

・そんな右大臣家の父子たち。先週は漢詩の会でエリート青年らの心を掴んだのに引き続き、今度は弟の懐柔に取り掛かり始めた道隆兄上の”優しさ”が、ぞわっと怖いなあ。ここまで、嫡男をきれいに保つため汚れ仕事を父に押しつけられてる次男の真実を、もし道隆兄上が知ったらどうなるんだ…と心配してたんですが、ええっと兄上、あなた御存じだったんですね? しかも「分かっておる」「お前を置いてはゆかぬ」ということは、自分の代でもよろしくって意味ですよね? うわあ、お前のため家人は始末したぞと物理的脅しで服従させたパワー系やくざの兼家パパと、お前のこと分かってるよ辛かったねだから俺の下に入りなと誘うインテリ系やくざな道隆兄上と、どちらが道兼にとってマシなんだ。地獄か。

・こう、知的でスマートな道隆兄上のやり口がだんだん見えてきただけに、晴明のやり過ぎに動揺して「人の命を操り奪うは卑しき者のすること」と嫌味言っちゃう兼家パパの迂闊さも見えてくるし、でもまた今のところ彼の強引な手法が完全に否定されているわけでもない。この後しばらく続く政治ゴタゴタ劇では、兼家と道隆との新旧合戦もまた続くのかもしれない。
自身の家を手酷く風刺する散楽を「見てみたかった」と道長が笑うのは、そんな父と兄の綱引きを引いた目で見てもいるからなんだろうなあ。散楽を笑えるくらいに傍観者でもある彼が、自身もプレイヤーとしてこのゴタゴタに飛び込むのは、さていつになるのか。

・それにしてもユースケ晴明、お腹の子どころか忯子さまの命まで奪ったことについて、単に呪詛の結果を誇るというより、それがどんな政治的結果につながるか滔々と述べるの、いかにも官僚的な立ち位置の今作陰陽師らしくて、とてもよいです。
この結果は国と右大臣にとって吉兆でしょうといけしゃあしゃあ述べるのも、皇子呪詛を命じられたとき、この国の未来を担うのはお前じゃない、私と私の一派だと脅されたのをちょっと根に持ってるからでしょう、絶対…。あなたが始めた物語じゃないですか的な。
そんな微笑ましいプライドがちら見えするところが大変好ましいですし、この陰陽師役人が、ちょっと面白げな心で見つめてた三男坊に、やがてどんな顔して深く関わっていくのかも大変楽しみ。

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