徒然亭四草という男が面白いのは、複雑な生い立ち、二枚目の風貌、シニカルで頭が切れて毒舌、しかし一度心を許せば情に厚い世話好きの寂しがりや…という、いかにもな属性てんこ盛りのキャラクターと見せつつ、そこに落語『算段の平兵衛』に心底憧れているという設定ひとつが加わるだけで、平兵衛のごとく振る舞っている言動と素の倉沢忍くんとの間に微妙な隙間があき、一気に人間味あふれるニヒルボケが立ち現れるところだと思うのです。
なので、『ちりとてちん』ブレイク直後にテレビでよく見たクールでピカレスクな平兵衛概念の役よりも、ここ何年か舞台などで見かける、一見ガラは悪いけど案外おもろいおっちゃんな役のほうが、虎さんのニンとしては個人的にしっくり来るんだよなあと。
彦八まつりのレポを検索していて、四草(の中の人)が18年で一番変わったという感想も割と見かけましたけれども、今の虎さんでこそ想像できる現在の四草師匠は、18年前と同じく怜悧で落ち着いた佇まいながらも、もう平兵衛という分厚い鎧で自分を守る必要もなく、倉沢忍くんのすっとぼけた素顔がぽろぽろ溢れる、愉快なニヒルボケのおっちゃんになっているじゃないかなと。それはきっと、あの最終回の先にあるものとして素敵な未来なのでは、とぞ思う2025年。
四草という人物を捉える上で、個人的に大きなベースになっているのが、2008年の『ちりとてちん』ファン感謝祭を取材した『TV navi』記事でして。
感謝祭レポ記事の傍らで、4人兄弟子がそれぞれ「喜代美ちゃん(若狭)へ」と題した一言コメントを寄せていまして、そこで四草こと虎さんのコメントがすごく印象的なんですよね。
「肉親になってくれてありがとう。四草自身は頭でははっきりわかってないんですけど、どことなく腹の底で思ってるんちゃうかな。なんか許せる存在です」
女というものは貢がせるか冷たく突き放すかという偏った平兵衛スタイルに染まっていた四草に対し、初対面からその二枚目に見惚れるでもなく、四草が思う「女」な言動をするわけでもなく、そのニヒルな平兵衛愛に「大丈夫なんやろか、この人…?」と冷静にツッコミ入れていた喜代美。
そんな2人なので、きょうだい弟子になってからも、並ぼうが密着しようが何のトキメキも発生しようがない、どこかとぼけた空気の”兄妹”だったのが、実に良かった。
落語の登場人物に惚れ込んで人生を180度転換させた四草が、師匠曰く「落語の世界から抜け出してきたような子」の若狭を「肉親」として受け入れていく過程。
それはまた、若狭と同じB子気質の小草若を受け入れ守ろうとすることで、師匠が見抜いていた「計算もできんアホな連中」の噺こそが実は似合う四草の本質が、開花していく過程でもあったんだろうなあと思うのです。

