・光る君へ第3回感想メモ
・帝の容態芳しからず、でいよいよ事態が動いていく中、登場人物も続々増えていく第3回。
円融天皇の病をめぐり、実資の理屈っぽい性格と実直な忠心、立ち回る道兼の複雑な承認欲求、懐仁擁立の一点だけは共有している兼家と帝の微妙な政治駆け引き、左大臣家の姫サロンに集う人々、それぞれのキャラと立ち位置を立て板に水で見せていく流れが相変わらず無駄がなくて面白い。
・ここまでの3回で何気に好感度高いのが、晴明の立ち位置をはじめとして、当時における「祈祷」や「邪気」といった存在への認識を、脚本も演出も現代目線からの”迷信”としては描いてないのが伝わることで。もちろん、兼家のように都合よく強かに利用する合理性もありますが、時代として一定の信仰心の枠は崩していないよなあと。このあたりの精神性は、時代を代表する文学作品を描く作家が主人公だからこそ、丁寧に描き続けてほしいところです。
・呑気に可愛がられ、だから疎ましかった三男坊が街で失態をおかし父上の信頼を損なった一方、自分は毒の処理も実資の取り込みも父上に言われた仕事を着実にこなしている。ここまで天秤をグッと傾けて、ようやく弟に「一献傾けぬか」とまともに兄らしい顔ができる道兼の繊細な厄介さが、回を追うごとに不憫になってくる…。
道長さえ、父と姉上のねじれた上下関係を理解している=もはやこの家でまともな親子の情誼は通じないと素直に受け入れて物事を図り始めているのに、父上の愛情と承認をいまだ諦めず渇望してる道兼が実は一番ピュアなのでは。
・ところで、協力した女房を抱いてやれ、守られてると思えば口は割らぬと道兼にけしかける兼家パパ。ああなるほど、この兼家さんなら、男と女の関係をタテに都合のいいとき頼み事してきて、それを相手の女性に怒り心頭で日記に書かれますね…道綱母あたりに…といろいろ思うなど。
・そして子供の定子さま登場。転んでも泣いてはいけない、入内するならば「何にも動じぬ強い心を持たねば」と厳しく育てる母貴子さまの言葉。あ~~…定子さまはこの先の未来、転んでも泣かず帝の后として美しく孤独に立ち続けよと……(既につらい)
・大石さん、事前のインタビューで平安時代はもともとそんな興味なかったようなこと仰っておきながら、毎回ちょこちょこ小ネタを細かく仕込んでくるあたり、やはりなかなかの策士なんじゃなかろか。
・今回の源氏物語オマージュは『帚木』。貴公子たちの女性品定めは源氏物語そのままとして、後半の倫子さまサロンも対比として合わせると、男女それぞれ恋バナについていけない三郎とまひろ、妙なところで似た者同士かもしれないし、このぼんやり具合がやがて、「一緒にいるとほっとする」=後に案外人たらしとして政治力となる道長と、自身に浮ついた話はほとんど無くとも類まれな人間洞察で種々様々な恋模様を描き上げる紫式部という、将来に繋がってるのも面白い。
・それにしても、第3回まで来て まひろの造形が魅力的だなあ。
代筆業や学問で培った世知長けた部分と、母を早くに亡くし女性社会での振る舞いを知らない部分との幼いアンバランス。姫さま相手に接待ができない世渡り下手は父親譲りの一方で、倫子さまが場を治めた言葉をそのまま受け取る素直さはとても好ましい(このお姫様属性への素直な感動は、後に彰子さまと良い関係を築ける素地になりそう)。
そして何より、自分を間者にされ楽しかった時間を踏みにじられても、外に出られる機会(たとえあの貴公子たちの漢文講座に比べればままごとのようなカルタでさえ、今の彼女には貴重)を得続けるため黙って父に従うほどに、「私が私がいられる場所」を狂おしく求めるマグマのような餓えと怒りが、あの笑顔の皮一枚下からふわっとにじみ出る瞬間。演じる吉高さんのくるくる変わる表情が、基本的に”静”な柄本佑さん道長とのコントラストもあって、ぐっと胸掴まれますね。
このまひろの表情が、怒りが、藤原摂関家が巻き起こしていく時代の激動の中で、どう創作意欲に集約されていくのかとても楽しみ。
・先週に引き続き、詮子姉上と道長が仲良くてホッとするし(あの後、街で三郎の馬を百舌彦が引いてたので、詮子姉上が道長の願いを叶えたのがちゃんと分かる)、太郎くんがまひろ姉上大好きでしっかり動く子なのも微笑ましい。
太郎が言う「たった二人の姉弟」を、もしかしたら未来のある時点でこのドラマの詮子と道長も言うかもしれないと思うと、やはりこの2組の姉弟にはずっとこのままでいてくれと願ってしまうのです。頼む。

