カムカムエヴリバディ第9週「1962」
#041 1月20日(月)
・相変わらず名前表記が「宇宙人」なジョーさんに引き続き、「こわもての田中」も再登場で、OPからもう藤本脚本好きはキャッキャ興奮してしまう第9週の始まり。
・るい編はOPで名前を見るたび、クリーニング店の竹村夫妻が「平助」と「和子」、合わせて「平和」なんだなあと幸せな気持ちになりますね。安子編で、豆腐屋きぬちゃんの両親が、卯平と花子で「卯の花」だったのに引き続いての遊び心ネーミング。
安子編は、岡山だから『桃太郎』でキジ=雉真(だから勇ちゃんは最後まで「鬼」畜米英のアメリカと相容れない)だったのに対し、るい編大阪パートは、「竹」村夫妻が預かり大事に育てた少女るいを大「月」に託すまでの『かぐや姫』、そんなお伽噺の見立てがうっすら感じられるのも、藤本脚本らしい洒落っ気。
・クリーニングの仕事にやりがいを見出す るいが、衣服の汚れとともに自分自身のしがらみや悲しみも消し取れて「真っさらな人生」を歩めるような気がする、そんな爽やかな始まりから、片桐との出会いで「真っ白な るいの世界が、ほのかに色づき始めていました」で締める今日の回、ナレーションが実に素敵だなあ。
その美しい文のとおり、真白く眩しい初夏の日差しの中で表情がほんのり色づいていく るいの可愛らしさ。
そして1周目だと、その「色」には片桐へのほのかな恋心だけが見えてたんですけど、2周目だと、全く読めないのに興味が尽きない宇宙人ジョーの存在もまた、るいの世界を彩り始めた「色」の一部なのだと確実に分かるのが面白くて。
・本放送のとき、『善女のパン』オチをかぶせてくるのは片桐さんか、宇宙人か、どっちだ!風間くんなら、見たとおりの誠実青年でも、実は「弁護士の卵」じゃないオチでも、どっちでもいけるよね!と家族と盛り上がったのが懐かしい。我が家ではいまだに『純と愛』の愛くん呼びです。
・片桐さんという人、その見たまんまの堅実さや良識ゆえに、やっと今少しずつ読んでいる本の世界から顔を上げ始めたばかりの るいをそこから引っ張り出すだけの魅力が十分ある人で、と同時に、そんな堅実な人だからこそ、無茶して踏み込んででも るいの硬い壁を突き崩すことはできない人だったんだなあと、2周目だとよく分かる。
あの距離の詰め方と、底の底に隠れた芯の的確な掴み方は、やはり「宇宙人」にしかできない天才の所業だったんですよ…。
・それにしても今日は、こわもての田中転生に加えて、『おむすび』でも四草兄さんこと虎さんがまさかの登場で、底抜けにちりとてDayでした。『おむすび』の高沢さん、商店街をリサーチした上で訪問ということは、きっちり算段してはるに違いない。
#042 1月21日(火)
・冒頭に入る『カムカム』オリジナルの円形「連続テレビ小説」ロゴがなければ、一瞬、何のドラマが始まったのか、つけるチャンネルを間違えたかと思っちゃう黍之丞見参。この緩急、大好き。
・黍之丞からの流れで、竹村夫妻が話題に出す『椿三十郎』。確かにあの重くスピーディーな30人斬りとラストの噴き出す鮮血を既に見た後の観客には、こちらのモモケンの殺陣はいかにも牧歌的に見えるだろうという説得力と、しかし西山さんが「戦前から散々楽しませてもろといて」と言うとおり、映画がエンタメの王様だった時代を長年支えてきたに違いないのが分かる風格と。
菊之助さん演じるモモケンの流麗な太刀さばきでバッタバッタと斬っていく、娯楽感あふれる画面の作り込みが絶妙。
・このモモケンの殺陣そのものも、本放送時はまさかあそこまで物語に深く関わることになっていくとは思いもしなかった。2周目だと、もうOPの名前表記「斬られる侍」だけでじーんとしてしまう。まだ『隠れ里』制作前、これまでのシリーズと一線を画す畢生の殺陣を密かに構想していた初代モモケンと、そんな大スターにもうすぐ見出されることになる虚無蔵さんですよ…。
・周囲の大人たち、特に母が「るいのため」と幼い自分にほとんど詳しい説明をせず行動し、悲しい結末になった子供時代の記憶がうっすらあるだろう るいが、相手のためを思い黙って行動したら何もかも台無しにしてしまった『善女のパン』を特に面白いと心惹かれるのは、どこか解せるとともに、切なくもある。
・『善女のパン』で画家が激昂したのは、3か月かかっていた設計図を台無しにされたことだけではなく、勝手に貧しいと勘違いされ憐れまれたことへの怒りもあったわけで。
2周目で見るとマーサのパンが 、この回の片桐さんお誘いだけでなく、後々までるいに掛かっていることに気づきますね。子供のとき一度は傷つき、長じてようやく「何が私の幸せか勝手に決めつけんといて」と怒れた るいは、自分の設計図に必要なのはバターつきパンでなく古パンなのだと掴みにいく。
・そして、この物語に入り込んで解説する るいの感性を「面白い」と言える片桐さんは確かに好ましい人ではあるものの、ミス・マーサの傷心でなく物語全体を俯瞰して「皮肉な話」と言い、マーサの行為を「損害賠償請求をされる可能性はある」と冷静に突き放してしまうあたりで、やはりいつかどこかで るいとは線が交わらなくなる感性の人だったんだろうとも思えるのです。
・るいの苦い初恋となってしまった片桐さん。ピンポイントで随分と贅沢な配役だったなあと今でも思いますが、決してるいの傷自体を彼は問題にしてはおらず、むしろ話を逸らそうともしてくれていた、それでも傷を見て固まった一瞬の表情、それを無かったことにしようと取り繕う”良識的”な態度自体が、るいにとっては、ミス・マーサの勝手な施しに傷ついた画家と同じく、傷つくには十分の理由だったと分かるのが、やはりさすがの風間さんの演技だったと思うのです。贅沢で、かつ欠かせない配役。
・本放送のとき、この回が年末最後の放送だったので、本編からスムーズに次週(年明け)予告を見られるのが嬉しい~。やはり『カムカム』は予告の作り方も楽しい。
この週の予告、連呼される「サッチモ」呼びは、どうしたって第8週の予告「るい」連呼を思い出さずにはいられないんですよね。二度と戻らない決意で故郷を出て、まっさらな人生を歩み始め、その真っ白な世界が少しずつ色づき始めている るいに「サッチモ」と新たな呼び名が加わる。どこかお伽噺的な藤本脚本において、名前の呼び方呼ばれ方がいかに重要(ときに人生さえ左右する)かを考えると、この「サッチモ」呼びの登場には2周目でもワクワクしてしまうのです。

